悔いはない! - ポエツ | poets

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お待ちかね(?)の「日本史人物探訪」ですが、予告どおり、木戸孝允もとい桂小五郎であります。何やら年始の特番で『新選組!』を放送していたらしく、この辺境の庵にしては珍しく時流に乗った(かすった)記事になるやもしれません。

前回の石田三成に続き、この桂小五郎も私好みの男です。もちろん織田信長や坂本龍馬のかっこよさはわかりますが、憧れの対象にはなっても、ヒロイック過ぎてシンパシーを感じられません。
桂にしても三成にしても、細かくて、神経質で、粘着質で、口うるさそうで、湿っぽくて、ひがみっぽい性格で、こう脱けるような明朗快活さに欠けるところに自分に通じるものを見つけてしまうのです。
あまり上司にはしたくないタイプですが、こういう男を恋人なりダンナにしたほうが面倒の見甲斐がありそうじゃないの。

もっとも史上の人物なんて多分に脚色されてますから、あまり典型的な像を当て嵌めない方がいいかと思います(特に三成に対する偏見はひどいものです)。
桂にもその人となりをよく表わしているエピソードがあります。

明治維新もすでに遠くなりつつある頃、桂は突然、大久保利通を訪れます。このころ両者はもはや若い志士などではもちろんなく、明治政府の押しも押されぬ重鎮、元勲です。
大久保はふらりと現れた桂をいぶかしみますが、お構いなしに桂は滔々と語り始めます。かつて長州が薩摩に受けた仕打ちへの恨み節を。大久保はさすがに閉口したらしいです。

これ私もあるので良くわかります。小学校の時の腹の立つことすらぶり返しますから、十年くらい前の恨みならざらにぶり返しますよ。「すで恨みの対象が存在しないじゃん」とか、「とっくに終わったことじゃない」などとおっしゃらないでください。真夜中に思い出してしまった日には、もんどり打って眠れたもんじゃありません。
私はきっと憤死ができるタイプなんです。世界で一番ステキな死に方です。死亡診断書に記入されるんですよ〈憤死〉って(←本当かよ)。

で、桂もふとした拍子に思い出したんでしょうね。「長州も薩摩も何も、もう藩制度が廃されてるのに」なんて言わないであげてください。思い出して反芻してるうちに、だんだん雪だるま式に太って収まりがつかなくなったに違いありません。そんなもの反芻しないのが賢いことはわかってるんですけど、なにしろ「蜜の味」がするもんですから、つい反芻してしまうわけ。一種のジャンキーです。

それで桂は「これは言わなきゃ気が済まん!」と腰を上げます。幸い恨み節をたれる対象もおりますし。
せめて、そういうことは言わずに腹の中にしまい込んでおく、のが次に賢い選択かもしれません。でも桂にしてみると逆効果に感じられるのです。
「こんな気持ちを腹の中に溜め込んでしまったら、自分はますます陰鬱な人間になってしまう。そうだ! 一度全部吐き出すだけ吐き出しちゃえば、最後は白い歯をキラリと光らせて笑えるサワヤカさんになれるじゃない!」

ハイ、間違ってます。
私も始終この錯誤に陥っています。もとからしてサワヤカさんじゃないんですから、吐いちゃえば済むってもんじゃありません。
そのあとは「なんであんなこと言っちゃったんだろう」と自己嫌悪に苦しむか、「あんなに恥も外聞も無く吐露したってのに、相手のあの反応のなさはなんだ」と余計腹立たしくなるか、そんなところ。


そんな桂さんではありますが、数ある幕末史の名場面でも最もカッコいい台詞を残してくれています。

歴史で言うところの「薩長同盟」締結へむけて、桂さんは薩摩藩邸で西郷たちと会談にのぞみます。まあ、ここでも西郷に向かって延々と恨み節を垂れ流すと言うミソはちゃんとつけています。
数日してこの会談を周旋した坂本龍馬が藩邸を訪れると、桂さんは陰鬱そうな顔です。いつまでたっても「同盟締結」が議題に上らないとのこと。

「坂本くん、今の長州から同盟を切り出すことは立場が不利になるし、弱いものが憐れみを請うに等しい。私は藩の面子をつぶすようなことはできない」
「藩の存亡がかかっているこの時になって、何故つまらないことにこだわりますか」
そう言う坂本に桂は答えます。

「長州も薩摩も、ともに勤王の志をかかげたが、不幸なことに長州だけが朝敵の汚名を被せられることになった。
私は攻めてくる幕軍を迎え撃つため国許に戻らねばならない。
これで長州は滅びるだろう。でも考えてみれば、薩摩のような大藩が仕えていれば帝も安泰であり、我々も後のことは心置きなく任せておくことができる。これで、これで…

「長州滅びるとも悔いはない」

いやいや、何度反芻しても桂さんにもらい泣きしてしまう名場面。
明らかに悔いありありで「薩摩にだったら安心して任せておける」って言ってしまうところが最高に切ないです。
これって恋人が他の相手と結婚してしまうシチュエーションと近似しています。

「そうね、あなたのように賢くてしっかりした女性が彼のそばにいてくれるなら、私も安心」

強がりです。決して本心ではありません。強がりと言うのは実に切なく美しいものです。そんなセンチメンタルなセリフをはける桂小五郎を、私は後ろからぎゅっと抱きしめてあげたくなってしまうのです。

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